アトピー性皮膚炎とうまく付き合っていくための注意点
アトピー性皮膚炎は子供から大人まで悩んでいる方の多い疾患です。慢性的な経過をたどることから、継続した治療と日常生活のセルフケアがとても重要になります。当院では患者様の気持ちに寄り添った治療を心がけておりますので、お気軽にご相談ください。
【目次】
アトピー性皮膚炎の特徴は?
- 強いかゆみを伴う湿疹が現れる
- 症状はよくなったり悪くなったりを繰り返し、慢性的な経過をたどる
- アトピー素因(家族歴や既往歴に気管支喘息やアレルギー皮膚炎などのアレルギー疾患がある)と、IgE抗体を産生しやすい素因をもつ人がなることが多い
- 適切な治療を行うことで、症状をコントロールすることができる
どんな症状が現れる?
主な症状はかゆみを伴う皮膚炎(湿疹)です。軽微な場合は皮膚が乾燥する程度ですが、症状が進むと皮膚の発赤やかゆみを伴う湿疹が生じます。さらに症状がひどくなると、患部が腫れてジュクジュクになったり、皮膚が硬くなったりします。強いかゆみがあるため皮膚を掻き壊してしまうことも多く、掻いた跡にはかさぶたができます。
左右対称の位置にできることが多く、顔や耳介周囲、首や体幹、四肢の関節部にできやすいといわれています。
原因にはどんなものがある?
アトピーになりやすい体質の人がアレルギー物質に触れたり、汗や化粧品などによって皮膚が刺激されたりすることで発症します。
肌にはバリア機能が備わっており、外的刺激から肌を守っています。けれどアトピー性皮膚炎の人はバリア機能が低下していることが多いため、皮膚が乾燥しやすく刺激に弱い状態となっています。
何が悪化因子になるの?
悪化因子には様々なものがあり、複数の因子が重なり合って症状を悪化させることが多いといわれています。
悪化因子と考えられるものには、次のようなものがあります。
- アレルギー物質:食物、ハウスダスト
- 空気の乾燥
- 紫外線
- 汗や汚れ
- 皮膚への摩擦や圧迫
- 化学物質:石鹸、化粧品、消毒液
- ストレス
どんな治療を行うの?
皮膚の乾燥には保湿薬を、かゆみにはステロイドや免疫抑制薬などの塗り薬を使用します。
ステロイドや免疫抑制薬以外の新しい薬を使用する場合もあります。アトピー性皮膚炎の病態にはサイトカインという物質が関与しているのですが、この物質の通り道をフロックする薬を塗ることで、炎症やかゆみを抑えることができます。
症状によって、抗ヒスタミン薬や抗アレルギー薬の飲み薬を併用することもあります。
ステロイドはアトピー性皮膚炎の治療に有効なものですが、長期的に使用すると色素沈着や多毛などの副作用が生じる可能性があります。そのため、複数の種類の塗り薬を調整したり、飲み薬を併用したりするなどして、患者様1人1人の症状や経過に合わせた治療を行います。
必要時に、アレルゲンを特定するための血液検査や皮膚検査を行う場合もあります。
アトピー性皮膚炎を完治することはできませんが、適切な治療を行うことで症状をコントロールし、生活に支障が生じるのを防ぐことができます。
悪化させないために注意することは?
自己判断で治療をやめない
アトピー性皮膚炎は、よくなったり悪くなったりを繰り返す疾患です。症状がよくなったからと自己判断で治療をやめてしまうと、症状が悪化してしまうおそれがあります。塗り薬や飲み薬が処方されている場合には、きちんと指示にしたがって使用しましょう。
肌を掻かないようにする
肌を掻くと症状が悪化してしまうため、できるだけ掻かないようにすることが大切です。かゆみが強いときには、処方されたかゆみ止めの塗り薬を塗布して対処しましょう。
就寝中に掻いてしまうことも多いため、肌へのダメージを抑えるためにも爪をきれいに切り揃えてください。
体が熱くなるとかゆみが増すことがあるため、シャワーや入浴はぬるま湯にしましょう。
肌に刺激を与えないようにする
悪化因子である肌への刺激を避けましょう。不用意に肌に触れたり、こすったりしないようにしてください。体を洗うときには、ゴシゴシこすらないようにして石鹸で優しく洗いましょう。石鹸やシャンプー、化粧品など肌に使用するものは、低刺激のものを選んでください。下着や衣類、寝具などは、通気性と保湿性が高く肌ざわりのよい綿がおすすめです。
汗や汚れも肌への刺激となってしまうため、肌を清潔に保ちましょう。帽子や日焼け止めなどを活用して、紫外線対策を行うことも大切です。
肌の乾燥を防ぐ
肌が乾燥するとバリア機能が低下してしまうため、保湿ケアをしっかりと行いましょう。保湿薬が処方されているときは、塗り忘れのないように毎回塗ってください。保湿ケアは、症状があるときだけでなく症状がないときにも継続して行うことが大切です。保湿効果が高く低刺激の保湿剤を選び、入浴後と必要時に塗りましょう。加湿器などを利用して、室内の空気を乾燥させないようにしてください。
悪化因子を生活から取り除く
食物やハウスダストなどのアレルゲンがある場合には、生活から取り除きましょう。ストレスも悪化因子となるため、心身をリラックスさせてストレスを軽減することも大切です。十分な睡眠時間を確保して、生活リズムを整えましょう。